第48話
「家が・・・」
思わず呟いていた。
「そ。あんたには関係なくても、しげの家に迷惑がかかるよな」
つまりは、ここでこの男に抱かれなければ、しげちゃんちに迷惑がかかると言うこと。
《若衆組に逆らうと、死活問題よ》
そう言ったしげちゃんの声が耳から離れない。
そうか、そういう意味だったのか。
あのエロ法師が家のことを心配していたのも、
お尻を触られたくらいでぎゃあぎゃあ騒いだ私を、呆れたようにしげちゃんが見ていたのも、
これが、日常行為だっていうことだ。
ごく、当たり前のこと。
本当にここは、日本?
こんな世界、知らない。
明らかに違う。
こんなこと、現代社会では許されるはずがないのに!!!
絶望感がひしひしと胸の奥に積もっていく。
もうだめだ。
しげちゃんや、ダルマのお父さんには迷惑かけたくない。
だって居場所が、私、居場所がないんだ。
ここを失ったら、私どうやって生きていけばいいの?
けれど、こんな男に抱かれたくない。
いやだ。
何度考えてみても、絶対いやだ。
誰か!!
そう思った瞬間、脳裏に浮かぶのは彼の顔。
助けに来てくれるわけなんてない。
だって、彼はここから大分遠いところに住んでいる。
声なんて、届くはずがない。
でも!!
「嫌っっ!!」
「待て」
障子の向こう。
月明かりで、ぼんやりと人の影が映る。
「誰だ?」
男も、訝しげに声を上げる。
「その女の、今宵の相手は私だ。千鶴子とは、約束している」
聞き覚えのある声。
望んだ声。
よく伸びる、その低い声。
助けて!と叫びたかったけれど、声が出ない。
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