第42話

「雛鶴殿に、期待しましょうぞ」




彦四郎さんも同じように笑っている。





「き、期待されてもこれ以上長くならないわよ・・・」



と、ボソボソ言葉を落とすと、2人は今度こそ大笑いし始めた。





「足などどうでもよいのだ。それよりも・・・」





目元に光る涙を拭いて、彼の手が伸びてきたのを見た。





え、と思った瞬間、その手が私のお尻を掴んだ。






一瞬にして時が止まる。






「女は尻だ。尻。うむ。ヒナは良い子を産むな!」






屈託なく笑った彼に、私の耳元ではブチっと何かが切れる音がした。



私にしか聞こえない、堪忍袋の緒が切れる音。




わなわなと唇と、両手が震えだす。


人間、本気で怒るとこうなるのか。






「・・・・このスケベ坊主っっっ!!!!!」







派手な炸裂音がして、右手がじんじんと痛んだ。


本気で殺してしまいたい!!!





「二度とあんたの顔なんか見たくないわ!!!!」





叫んで、勢いよく戸を閉めた。



閉めて、板間の床の上に突っ伏す。




なんだかものすごくショックで、涙が出てきた。




だって、少なくとも私の時代には、突然お尻を掴んでくるようなおかしな男はいない。




あんなケダモノみたいな男、いるわけがない!!!

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