第39話

「・・・ねえ」




「なんだ」




呼び止めた私に、彼は少し眉を歪めて振り返った。







「そんな大事な名前、なんで私に教えたの?」








初めから、別の適当な名を名乗ればよかったのに。




尋ねると、彼はいよいよ考え出した。


少し宙を見上げて考え込んでいる。



どうせ、とっさだったからそう名乗ったのね。



その言葉の合間の沈黙がそう言っているようなもの。






「それは・・・」






彼が言葉を落としたのと同時に、髪が私の頬にかかる。



柔さが触れる。





え?






「やはりおなごはよいな」






私を見下ろして、にやりと笑った。





こっ、この男!!!!





き、ききキスされた!!!!!





嘘でしょ?!!



なんでこんなところで!


なんでこんな時代で!!!




ああ、もう、まともに考えられない!!!!






「このスケベ法師!!!!!」






女好きのお坊さんなんてどうにかしてる!!



こんな男にファーストキスを奪われるなんて!!!


最悪っっっ!!!





危険を察知したのか、屈託なく笑いながら彼は消えた。

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