第25話

近い。




近いっていうかこれはもう!!!!!






唇が、触れそうになっているじゃないの!!!!






悲鳴を上げそうになって、そのまま後ろにのけぞる。


そのままひっくり返って頭を強く打った。




「なぜ避ける」




彼が呆れたように声を上げた。


軽く脳震盪を起こして、世界が揺れたの感じた。


絶対今の衝撃で、私の脳細胞の大部分は死滅したと思って悲しくなる。



もともと少ない私の大事な脳細胞が!!






「それはこっちのセリフよ!!なんでキスしようとしてるのよ!!」







痛みを堪えながら叫ぶ。


案の定彼は眉をしかめた。





「きす?」






ああ。



思わず落胆する。





込みあがった怒りが、冷却されるかのよう。



そして沸々と恥ずかしさが湧き上がってくる。






「く、く、口付けよ!!!」






なんで私がこんなことを言っているのか全くわからない。



こんなうら若き乙女が!!




本気でお嫁に行けなくなる!!!





「ヒナはおかしな言葉を使うな。もう師走だ。寒い」





どういう理屈だろうか。





しまった、と思ったときにはもう遅かった。



その手が、私の足を掴んでいる。





仰向けに倒れこんでいた私を、縫い付けるように押さえ込む。





「運動すれば、暑くなる」






う、運動?




運動って?!!





固まった私を見て、彼はにやりと笑った。



不敵に。







狼。





しまった、私、食べられてしまう!!!!

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