第22話
「あ、あれ・・・柿の色・・・」
とっさに柿の色って言ってしまった。
だってそれしか思いつかなかった。
食い意地が張っていると思われたらなんか嫌だわ。
彼は、ああと言うように、大して気にもせず順序よく自分の上着を脱いでいく。
寝にくいのだろうか。
その氷色をした頭巾も、衣擦れの音を立てて冷たい床に落ちた。
やっぱり、狼。
長い髪が、無造作に散る。
月の光に反射して瞳の色と同じ銀色に見えた。
「柿色。よい、別に。早く来い」
「は?」
思わず眉を歪める。
「早く」
どういうことかわからずに、躊躇したけれどその強さに抗えずに私は彼の傍に座る。
その冷たい手が、私の腕を掴む。
思わず目を見張った。
この手!!!!!
「この手!!!!」
頭の中が一気に飽和状態になって、それしか言葉が落ちてこない。
ただ、手と彼の顔を交互に見ながら、口をぱくぱくさせた。
「なんだ?手がどうした。間抜けな顔になっておるぞ。お前、名は?」
そう言われて一気に頭の奥が覚める。
恥ずかしさがこみ上げてきた。
「ち、千鶴子。桜井、千鶴子」
「ちづこ?」
「そう。千の鶴の子供って書いて、『千鶴子』」
それを聞いて、突然彼は弾かれるように笑った。
その笑顔を見てムッとする。
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