第二章 灰白

第19話

そしてなぜこうなってるのか、わからない。






氷色の着物を着た男の人は、私の目の前に座り込み、どういうわけか熱心にお経を読み上げてくれている。




次第に落ち着いてくると、これはもしや私何かおかしな人間だと思われたのかもしれないと思ってひやひやとしてくる。




まあ、こっちの時代の人から見れば、正真正銘私はおかしな人間なのだけれど。




氷色の背後では、一緒にいた数人の男の人たちが、私を心配そうに見つめている。



この人たちはみんなオレンジ色の着物を着ているから、なんだか暑苦しく見える。




そしてそのまた後ろでは、しげちゃんとダルマのお父さんと、もう一人ひょろりとしたおじさんが座ってる。


ダルマのお父さんよりも、年齢は下だと思うけれど。




多分、しげちゃんが言っていた、この家の主だろう。



さっきしげちゃんが「叔父さん」と呼んでいた。






それよりも、もしかしてこれは大騒動になっているのかもしれない。




ど、どうしよう。



とりあえず読経はやめてもらいたい。


私もう、正気に戻ったから!




それを何とか目の前にいる氷色の着物を着ている人に伝えようとするけれど、彼は目を閉じてお経をあげてくれているから全く気づかない。




じっと彼を見つめていると、


月明かりが、音も無く降るように差し込んでくるのに気づいた。





青い光が、さらに氷色を青く染める。




その肌を青く染める。






思わず生唾を飲んでいた。



はっと小さく息を飲む音が喉からした。







今まで取り乱していたから全く気づかなかったけれど、この人美形だ。







眉目秀麗って言葉がぴったり。



弁慶が被るようなおかしな頭巾を被っているから全体像は不明だけれど、その顔立ちは秀逸だ。




女の子にモテそうだな。




いや、お坊さんだからそういうのには縁がないのかな。


だとしたらもったいないな。




ん?お坊さんだよね?



お経読んでるし、数珠を持っている。



着ている着物も、ダルマのお父さんや、ひょろりのお父さんとは違う。

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