第14話

「もっ!もう一人!!もう一人いなかった?!!私の傍に同い年くらいの男の子が!!」




弾かれるようにして、その子の肩を掴む。


私の慌てぶりを見て、にやりとその子は笑った。





「あら、貴女も駆け落ちの途中だったの?それで行き倒れ?早く言いなさいよ。ここは私の親戚の家だけど、すぐ近くに私の家があるから数日泊まってってくれても構わないわよ」




「ちっ!違うから!!!弟!私の弟なの!!」





か、駆け落ちって!!


そんな相手いないし!!



全力で抗うと、その子はつまらなそうにため息を吐いた。





「そうなの。貴女一人だったわよ。誰もいなかったわ。」




はぐれた?



私、一人?




ううん。



はぐれたと思うこと自体おかしいのかもしれない。





ここは一体どこ?





やけに静か過ぎることに気づく。



車の走る音がしない。


何も。



この場所は単純に、静かな場所なのかしら?





「こ、ここって、どこ?」





「ここ?ここは大和の国、十津川郷よ」






「や、まと・・・・とつがわ?私の弟の名前も『やまと』なの・・・」





呆然としながら呟く。




「あら、大層な名前をもらったのね。貴女の名は?」




彼女はケラケラと屈託なく笑う。




「ち、千鶴子」




「ちづちゃんね。私、しげ。しげちゃんでいいわよ」



「うん・・・」





やまと・・・



大和の国?




そんな都道府県名があったのかな。



いくら私が地理に疎いからって言っても、そんな都道府県名聞いたことがない。


弟と同じ名前の県の名だったら、知らないはずがない。





「し、しげちゃん・・・」



「何よ?」





「そういえば、その服・・・」





「あ、これ?かわいいでしょ?桃色の小袖。一張羅なんだけど、今日は記念すべき駆け落ち記念日だし」




自慢げに、着ている服を見せてくる。



それは、着物。



《こそで》と言っていたけど、着物。



多分、着物の中の小袖と言う部類のものなのだと思うけれど、私が知っている着物とはまた違う。



帯が違う。



男の人のするような細い帯で、腰の下辺りで結んでいる。

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