第3詩 【栞(しおり)】


穀物の収穫も、


はや、終えた跡と視え、



農夫たち、


見栄えする農婦たち、


粗雑(ぞんざい)に土地に坐りこんで、


酒盛りとなる 目下快活(わららか)に酒浸りで。



奈様(どんな) 野暮天も通らずに、


路傍も 確乎(しっかり)した紅(くれない)に映えゆき



  (お囃子(はやし) 通るぞ 風のうた……)



奈様(どんな) 伊達(だて)も婀娜(あだ)も通らぬとも、


路傍も 寂しくはない ほろ視える


すこぶる岩乗(がんじょう)そうな農夫婦たちの


彼(あ)の 乾燥(はしゃぎ)きりよう!



  (お囃子(はやし) 通るぞ 風のうた……)



旅人が めぐり来る 我が身一つで、


遠方から 不思議な栞(しおり)を 伝(つた)い来る,


音のない音楽が つまびかれる土地。


匂いのない香(かんば)しさを 風が残してゆく土地。



  (お囃子(はやし) 通るぞ 風のうた……)



山の段(きだ)が しずかな赫赫(かっかく)で色づき、


赫赫(かっかく)は 遠景まで色づかせ、


この土地の導(しるべ)とする 不思議な栞の路の上に


落日がくる 落日がくる


宴(うたげ)につかれた農夫婦たちが


家路をさがす頃合いには


千々(ちぢ)に拡がる 星ぞらが


差し驚かすほど ひかり視える。


尽きることも 尽きるときもなしに



  (お囃子(はやし) 通るぞ 風のうた……)





  


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