第92話
◇
コンコン、部屋をノックすると、すごい勢いでドアが開いて、なにかが突進してきた。
「馬鹿、どこ行ってたの!遅すぎてほんと心配したわ」
私に突進してきたのは亜里沙で、なかなか帰ってこない私を心配してくれたみたい。
「ごめん、ちょっと、迷子…みたいな」
「あんたほんと方向音痴よね…」
さっきの心配の表情とは全く異なり、呆れたような声色の亜里沙が、私が手で握っていたシャツの存在に気付いたようで。
「ふーーん、そういうこと~」
「……ぅ」
「まあ、私はいいと思うけどね、妹って言ってあんたから逃げてる、いまのりっくんよりは」
「逃げてる?」
「逃げてるじゃん。妹って言って自己防衛してる。紗葉に他の男が近づかないようにしてるくせに、自分で手に入れようともしない」
客観的な意見が、胸に刺さる。
私は、陸のなんなんだろう?
もちろん本物の妹になれるはずもないし、なりたくもない。
誰よりも近くにいるはずなのに、本心をお互いに打ち明けてはいない。
この関係が崩れるのが、怖くて。
お兄ちゃんぶりたい陸と子供っぽい私っていう関係は、ありえないくらい自然で、心地よくて、だからこそ進むのが怖いの。
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