第90話

「多分、離れられない。陸に振られない限り、ううん振られてもずっと」




私の、十数年分の想いを、ありったけ森山旬にぶつけた。


ぶつける相手、間違ってるかもしれないけれど。


なにも言ってくれないまま、時間が過ぎる。




「森山旬、引いた?重くて」


「旬でいいよ、フルネーム長い」



思ったより、近くにいた森山旬、…旬にドキドキして。


涙の跡を辿るように、長い指が私の頬に這う。



陸以外に、こんな風に触れられたの初めてだから。ドキドキしてしまうのは、仕方ないよね…?




「旬…?」


「さっきさあ、お前、幼なじみに振られても好きって言ってたよな?」


「うん…?」



他の人の口からきくと、若干、いや、かなり、恥ずかしい。



「でもさ、お前がもし俺を好きになったら」


「…は?」


「それはもう、幼なじみを好きではなくなるってことだよな」




不覚にもニヤリ、とした意地悪な笑みを綺麗だって思った。

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