第88話

「陸はね、4月1日が誕生日でね、私は2日なの」


「へえ」


「ずるくない?1日しか誕生日変わらないのに、学年がひとつ変わっちゃうんだよ?」




興味なさそうな森山旬に、何故か陸への告白をしてしまった私は、気持ちが高揚したままで話し続ける。




「もし、陸がもうちょっと長くお母さんのお腹の中にいてくれたら、私がもうちょっと早くお母さんのお腹から出ることができていたら、って何万回も思ったし、神様のことも何回も呪った」


「ふうん」


「学年が違っても、いま私が陸のこと好きなのは事実だし、仕方ないのかなって思ったりするときもあるけど」




星はこんなにいっぱいあるのに、月はひとつしかない。


男の人は、たくさんいるけど、好きな人は陸だけ。




「でも、学年が同じだったらな、って思っちゃう。やっぱり。楽しい行事も、つらい出来事も一緒に経験したい」




さぁ、と海風が私の髪を巻き上げる。


さざ波の音しか聞こえない世界に、ふたりきり。

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