第87話
「お前小さいから、体育座りしてるともっと折りたたまれて、見つけんの大変だった」
「うるさい」
優しい波の音が、耳を擽る。
態度を変えず、こぶし2個分くらい離れた場所に座ったこの人にしか、今の私の気持ちは吐き出せないような気がした。
「私ね、ショックだった」
突然話し出した私に、森山旬は視線も寄越さず、相槌も打たず、ただ波打ち際を見つめている。
「プリントを隠すとか、小学生のいたずらじゃん、って思えたら、楽なんだろうけど、そう簡単にはいかなくて」
聞いているのか、いないのか。そんなことも気にせずに、私は話し続ける。
「あんな風に、人に悪意を向けられたのなんて、はじめてで。怖くて仕方なかった、私はいままで、何人の人にこうやって思われていたんだろう、って思った」
「……うん」
「…でもっ、私だって陸の一番近くにいたいっ…」
亜里沙にすら、自分の言葉で伝えたことのない、この想い。
好きだって、ばれてるけど。
でも、こういう風に宣言したことはなかった。
ずっと、心の中だけでくすぶっていたこの気持ち。
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