第85話
「でも、別に証拠?とかないんでしょう?あんまり決めつけたらよくないよ…」
「は?」
「はい、すみません、ごめんなさい」
すごく怯えてる女の子を庇うと、今度は私が森山旬にキレられて、また謝り倒す。
「俺が携帯を忘れて、昼休みの途中、ひとりで広間に戻ったとき、誰もいないはずの広間にこいつがひとりだけいた」
「でもそれだけじゃ、」
「英語の前の休み時間、お前がどっか行ってたとき、こいつは俺に自分の連絡先を渡しに来てた。その間俺はちゃんと起きてた」
私の言葉を遮って、森山旬が話す。こんなに饒舌な森山旬を見たことが無くて。
「あの時間に、お前のプリントの山に近づいたの、こいつしかいねえんだよ」
顎で、くいっと、女の子を指す。
「本当…、ごめんなさい…」
さっき、休憩室で聞いた声よりも、もっともっともっと小さくて、聞き逃してしまいそうな声。
「どうして…?」
「羨ましくて…、西内先輩の幼なじみの村岡さんが、羨ましくて。なにかしてやりたいって思ったけど、なにしたらいいのかなって思ったの、でもこれくらいしか思いつかなくて」
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