第81話

「甘いってどういうこと…!?」


「とりあえず、紗葉を甘やかすために生きてるようなもんだよ、りっくんは。それが生きがいなのかも」



私を甘やかすためだけに生きているわけではもちろんないけれど、亜里沙はさも当然のように言い切って。



「でも、りっくんは残酷だよね」



残酷――、私の知っている陸とも、みんなのイメージの陸とも、多分対極にあるような言葉。



「なんで?」


「だってさ、あんなにかっこいい幼なじみがいるだけじゃなくて、その人が甘やかしてくれるんだよ?絶対男のハードルあがるでしょ、紗葉の!」


「あああ、確かに!」




みんなは納得してるけれど、私はまだよく分からなくて。


ハードルがあがるとか、そういうことじゃなくて、そもそも陸以外の男の人に興味を持ったこともない。うー、難しい、わかんない。



「そういえば私、森山くんと同じ中学校だったんだけどさ、森山くん、ずっと好きな人がいたらしいよ」


「え。森山くんのことを好きな人じゃなくて、森山くんが好きな人?」

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