第77話
「村岡さん、どうかした?」
「英語のプリント、なくなっちゃって」
「あれ?ボク、朝配り忘れちゃった?」
「ちゃんと配ってもらって、さっきまではあったんですけど、なんか、…消えちゃって」
まるちゃんは不思議そうに首をかしげていたけど、とりあえず英語のプリントを渡してくれた。
それを大事に両手で持ち席に戻るけど、広間のほとんどの人が授業のスタートに備えて座っているから。変に目立つ。
「もらえた?」
「うん」
「もう食べちゃダメよ」
「食べないけどさあ、ほんとに私がお手洗い行く前にはあったんだって」
本気で神隠しを疑っちゃうレベル。
だって、本当にあったんだから。絶対。
「トイレの神様かなあ」
「トイレの神様、英語のプリントなんていらないでしょ」
「そうだよねえ」
もはやどちらがボケでどちらがツッコミか分からない私たちの横で、ひとり、森山旬は険しい表情を浮かべている。
「どうかした?」
「いや…なんでもない」
「そっか」
なにか思い出したのかと思ったけれど、ずっと机に突っ伏して寝ていた森山旬に期待しても仕方ない。
「はい、はじめて~」
学年主任の声で始まった5時間目。
一斉に問題を解き始める。
うう、英語…、難しい。
プリントを半泣きで解き進める私の横で、森山旬はずっと険しい表情を浮かべていた。
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