第75話

「え?貸してくれるの?」


「お前プリント寝ぼけながらやってただろ」


「なんでわかったの」


「字がワカメみたいで読めねえから」


「え!?」




全然見直さないで渡しちゃったけれど、確かに究極に眠かった最初のほうの文字が、ワカメみたいにうねっている。



「解読不可能で時間がかかりそうなので。どうぞ?」


「かたじけない」




綺麗で読みやすいのに、男らしい字。


しかも、ほとんど合ってるし。


あ、ここ、間違ってる!わーい!



間違っているところを見つけて、ひとりでこっそり喜んでいるのを気付いているのか睨んでくるけど、そんなの無視。



まあそのあと、私の書き込んだ答えのほとんどに、これ見よがしに大きくバツ印がつけられたのは、分かり切っていたこと、だよね?





「ねえ、私の英語のプリントと答え、知らない?」


「知らねー」


「ないんだけど!!!」


「知らねー」


「えぇぇ」


「うるせえ」




つい2時間ほどまえにもしたような気がするやり取りを、もう一度繰り返す私と森山旬。

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