第74話

「数学、赤点オメデトウ」


「ねえ、天国行ってみたい?行きたいよね、わかったうん死んでこい」




笑顔はくれない。


でも、きっと、絶対、多分、森山旬も楽しんでいて。


そんな私たちを、複雑な感情で見ている人がいるなんて、全く気付けなくて。



複雑に混じり合ったいくつもの矛盾する感情が、どうなるのかなんて、想像もついてなかった。



気付いてなかったのは、陸に甘やかされ続けていた、私だけかもしれないけれど。





「ねえ、私の答えのプリント知らない?」


「知らねー」


「ないんだけど」


「知らねー」


「えー」




配られた軽食を、亜里沙と高瀬君を交えて食べたあとの、3時間目。



眠気と戦いつつ解いた、世界史のプリントもようやく終わり、森山旬の丸付けをするために解答の書いてあるプリントを探すけど、まとめて配られていたはずのプリントの中の1枚が消えていて。




「お昼食べる前まであったんだけどなあ~」


「気のせいだろ、ほら」




ぺらり、怠惰そうに渡してきたのは、私がいま探していたのと同じプリントで。

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