第73話

シャッ、シャッ、



静かな広間に、赤ペンを走らせる音が、リズムよく響く。


まる、まる、まる、まる…


私よりすごい勢いで問題を解き終えて、残りの時間でうとうととしていたから、どうせ適当なのだろうと思っていた森山旬の回答。




ペア同士で採点するルールで、私が回答を受け取ると嫌そうな顔をしたから絶対自信ないんだと思ったのに、途切れない丸の連鎖。



それに比べて私のプリントは……、



お互いに採点が終わり、憂鬱になりながら、プリントを返してもらう。




「あ・ほ」


「ううう、なにも言えない…」




暴言を吐かれたけど、言い返すことすら恥ずかしいと思えるほどの圧倒的な差に、認めることしかできない。寝てるくせに、頭良いとか何者。




「ま、バカなの知ってたけどな」


「なんで!」




一応、授業中に当てられたときは、無難にやり過ごしていたはずだけど…。




「お前のが出席番号先じゃん?」


「うん」


「先生たち、ボールペンで採点するからさ、俺の答案用紙にお前の点数の跡が写ってた」


「ええええええ」




それは、アウト。

確実に、アウト。

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