第68話

そんな私の努力なんて完全無視で引っ張られ、肩と肩は触れ合うし、咄嗟だったとはいえ、私の手は奴の太ももの上に置いちゃったし。



陸以外の男の人と、こんな至近距離になったことなんてなくて、思いっきり体温が上昇するのが分かった。




「へえ、可愛いじゃん」


「…!?」




りんごより真っ赤になった私の頬を覗き込むと、そう呟いて、あっさり私の腕を解放した森山。



ほんっと!!何が目的なのか分からない。



昨日まで、文句以外のことで私に話しかけてきたことなんて無かったのに。



よりによって陸がいる前で、ペアだって言ったり手に触れたり、優しさを見せたり。




上がった体温がなかなか下がらなくて、手でぱたぱたと顔を仰ぐ私を尻目に、森山はまたイヤホンを付けて目を瞑り、私も含めた世界の全てと自らを隔離している。




今回は、本当に眠ってくれたみたいで、隣でうつらうつらしていて。



この寝顔、写真に撮っておいたら、ものすごーく需要あると思う。私は全くいらないけど。

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