第64話

先に5号車に着いて、後ろを振り向くと、身長が同じだから歩幅も同じなのか、ふたりが並んで歩いている。



柔らかな表情の陸と、無表情の森山。



その印象は正反対なのだけれど、どこか似ている気がした。ほんとに、ちょっぴり、だけど。




「陸、ありがと」




バッグを受け取ろうと手を伸ばすと、横から森山がそのバッグを奪うように取って、持っていてくれる。



バン!と落とされたりするのかな、って思っていたけど、しっかり持ってくれて拍子抜けした。




「あ、りがと」


「はやくそのリュック返しちゃえよ」


「あ、うん!」




私の荷物と比べて軽すぎて、存在を忘れていた陸のリュック。



慌てて返したその瞬間に、ぐいっと腕を引かれバスの中に押し込まれた。




「え…!?なに!?」


「そろそろ時間」


「えええええ」




陸にちゃんと行ってきますって言いたかったのに、身体をぐいぐいと押され、無情にも陸と離されていく。



バスの通路まで行くと、今度はクラスの視線に晒されて。亜里沙だけは、にやにやしながらこっちを見ているけど。

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