第61話

「そろそろサッカー部の3年生も最後の大会?」


「あーうん。2週間後」


「陸、出るの?」


「どーだろ、流石に引退試合だからなあ」


「先輩優先だよね」


「ま、出ても足引っ張らないように、ちゃんと準備しとくよ」




学校への最後の角を曲がると、正門の外にクラスごとのバスが何台も並んでいて、非日常間にわくわくした気持ちが湧き上がってきたけれど、ペアの存在を思い出し一気に沈んだ。




陸と歩くと、高校への道のりが縮んでるんじゃないか、っていつも思う。



もう着いちゃったあ、って思ったけど、結構集合時間ぎりぎりだったらしく、他のクラスももうほとんどの人がバスに乗り込んでいるみたい。




「荷物、ありがとね」


「いいよ、持ってく」




5組のバスは結構奥に停まっているみたいだから、陸に持ってもらうのは申し訳ないなあ、でも重いなあ。



私の心がふたつの感情で揺れたけれど、陸の好意に甘えることにして、ふたりでバスのほうへ歩いていこうとしたそのとき。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る