第57話
「だからキャリーバッグにしろってあれほど」
「だって、1泊なのに、ひとりだけ荷物大きかったらやだもん」
「まあ、確かに去年キャリーの人いなかったけど」
「ほらー!」
昔から、旅行のときの私の荷物が多いことを知っている陸は、呆れたように笑っている。
「今日は何もって来たんだよ」
「え?明日の着替えとか、勉強道具とか、色々…」
「その“色々”のせいだろ、重いの」
「むー」
「どうせ、お菓子とか大量に持ってきてんだろ」
「う…」
確かに、バスの中でおなか減ったらどうしようとか、みんなに配ろう、とか考えて、お菓子沢山持って来てるけど。
なんでもお見通しの陸に、「ふんっ」と口を尖らせて、ふて腐れていると、重くてどうしようもなかった荷物が、急に重力が逆になっちゃったみたいに、ふわっと持ち上がった。
「あれ?」
「あれ?じゃねーよ、なにこれよくこんなの持ってたな」
私のパンパンのバッグは、陸が担ぐように持っててくれていて。陸でさえも、重そうな表情を浮かべている。
「紗葉、こっちもって」
「あ!はい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます