第58話

陸のリュックを背負うと、私の背中のほぼ全体が大きなリュックに覆われてしまって、改めて感じた身長差にどきり、胸が鳴った。




「陸、重いでしょ、ごめんね、ありがと」


「…お前、これジュース入ってるだろ」


「うん、2リットルのやつ」


「遭難するような場所にいくわけじゃねーんだから。さすがに重過ぎんだろ…」


「そんなこと言ってると、本当に遭難した時に、陸には何も分けてあげないからね!」


「荷物降ろしてもいいのかな?」


「ゴメンナサイ、喜んで献上いたします」


「よろしい」




重そうな表情はわざとだったらしく、軽々と私の荷物を運んでくれる陸。



きっと、いまの陸なら私のことも軽々と運んでくれるだろうな、なんて。自分の想像に赤面してしまった。




「紗葉結局バスケ部入んなかったの?」


「マネージャーで見学行ったんだけどさ、結局観てたらやりたくなっちゃってどうしようもなかったから、やめた~」


「お前動きたがりだからなあ。まあ暇なときは構ってやるよ」


「毎日構って~」


「ふざけんな」

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