第56話

「んーと、あれ、あと一組足りないなぁ」




名簿を見て、まるちゃんが顔をしかめる。そして、こちら側に視線を向けてきた。




「村岡さん、森山くん!まだペア作ってないよね?」


「あ、はい…」




まるちゃんに声を掛けられてるのに、後ろの席の森山は起きてもいない。 



授業中も寝てたりするのに、テストの点数はかなり良いみたいで、先生からも一目置かれているらしい。許せない。




「じゃあ、村岡さんと森山くんがペアってことで、いいかな…?」


「あ、はい…、大丈夫です」




嫌だあああ、って叫びたかったけど、大人になる。



ていうか、ここまで来てもまだ居眠りしてる性格ワル男の神経を疑うんだけど…。



ということで、私はクラスでいちばんペアになりたくなかった奴と、ペアになってしまったのだ。



――――その日から、1週間と数日が過ぎて、ついに宿泊学習、いや勉強合宿の当日になった。




「お、重い…」




2日分の荷物と、勉強道具を詰めたバッグを持っている私は、初夏の清々しい気候の中で、ひとりだけ汗をかきそうになっていた。

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