第50話

昔はこんなに身長差なかったのにな。



いまは20センチのすっごい厚底のサンダルを履いたとしても、陸のほうが大きいなんて。




「たくさんご飯食べてたのに、どこに行っちゃったんだろう、栄養さんは」


「さあ、頭と胸ではないのは確かだな」


「…傘返して?ひとりで帰りなさい!」


「とれるなら、返してやるよ?」


「陸なんて、バナナの皮で滑っちゃ、ええぇ」




雨で濡れた道をローファーで歩いて、ずりっと、滑ったのは私で。まるで抱えるみたいに、陸に受け止められる。




「あ、りがと」


「バナナの皮なくてもつまずいちゃうやつがここにいます」


「え!陸!みて!虹!」




抱えられたおかげで、傘で覆われていた景色が見える。



綺麗な7色の虹。さっきまで鬱陶しかった雨が雲の隙間から注ぐ太陽の光で、きらきらと光のシャワーみたいに感じる。




「さて、勝ったから紗葉にアイス買ってもらわないと」


「買う、買うから、離して…!」




ライバル、っぽい人が現れて、不安になったけど。


こうやって、陸も私といてくれるから、きっと、大丈夫だよね?



どうか、見守っていてください。


虹に神様がいるなんて、聞いたことないけど。



綺麗な虹に、祈りを届けた。

不安なんて、雨が流してくれればいいのにね。

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