第48話

「あれ?陸くん、傘持ってきてなかった?」


「…そーだっけ?」




いたずらっ子のように、しらを切る陸に、紫穂先輩は、肩をすくめ、長い髪を耳にかけて。




「タオル、洗濯して返すね。今日はお疲れさま」


「そのままでいいのに。マネージャーもお疲れ」


「ううん、洗濯させて。紗葉ちゃんも、ありがとう。また今度、色々聞かせてね」


「あ、はい!ありがとうございます。お疲れさまでした」




紫穂先輩が雨の中を歩いて行ってしまうと、陸はカバンをがさごそしている。




「ちょっと、紗葉これもって」


「えーこれー?」




制服姿の陸が渡してきたのは、さっきまで陸が着ていた泥の跡がついたユニフォーム。




「水洗いしたし、ドライヤーで大体乾かしたからいーじゃん」


「いいけどさ~。なんで」




私の質問には答えずに、陸はもう一度バッグの中をごそごそし始めて、次に出したのは携帯。




「えっ?さっきの雨で壊れてないの、それ?」


「防水ケースだから大丈夫」


「そんなの持ってくるなら、傘持ってきてよ」


「そっち逆光だからこっち来て」


「無視すんな」

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