第45話

「グミ、陸くんが好きなんて知らなかった。やっぱり、幼なじみって、すごいね」


「子供っぽい食べ物が好き、みたいです」




雨音は、強くなる。

強くなる心音を、隠すくらいに。




「もう、知ってるかも、しれないけど」




独特の緊張感が、全身を駆けて。




「私、陸くんのこと、好きなんだ」


「…っ」




予想していた言葉。それでも、脳は認識することを拒絶して。




「ごめんね…」




そう呟いたこの人は、きっと私の思いに気付いてる。


私が、この人の想いに、気付いたように。



むしろ、私の想いに気付いて無いのなんて、陸くらいだと思うんだけど。



落ち着け、紗葉。


なんのために、漫画で勉強して、恋敵が現れたときのシミュレーションをしたの?



この人は、ライバル、だよ、ね…?




「私、邪魔する気はないの。二人の関係を、壊すつもりなんてない」


「え?」


「ただ、好きなの。邪魔はしないし、気持ちを伝えるつもりもない。でも、誰よりもそばにいたいって思っちゃうの」




誰よりもそばにいたい、って。


それは、私に向けたライバル宣言のはずなのに。


それなのに、私の恋路を邪魔する気はない、って。


これは、ライバルだと言える?




なにか、言いたいけど。


私の拙い語彙では、この生まれて初めての状況に相応しい言葉を紡ぎだせない。




黙ったままの私に、紫穂先輩は、さっきまで話していた内容を忘れたみたいに、すっきりした声で話しかけてくれて。

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