第43話

「あ、私は、もう少しここにいるよ」


「そっか、分かった!じゃあまた月曜日にね。学校でももっと話そ」


「紗葉ちゃん!子供の頃の陸先輩の話とか聞かせてね!写真とか!よろしくね!」


「うん、任せて。じゃあね、お疲れさま」




手を振りつつ、雨が降り注ぐ世界へ向かって、ふたりは歩いて行って。周りの人も、ひとり、ふたり、帰って行って、ここには私だけになった。



――――…


『リク!おそと、あめだよ!』


『さは、ぼくはおにいちゃんなんだから、よびすてはだめだぞ!』


『えー、でもいちにちしかたんじょーびかわらないよ?』


『それでも、ぼくはおにいちゃんだよ、だから、さはのことまもってあげるよ』


『さははね、リクがおままごとしてくれるから、あめ、だいすき!』




雨音を聴いていると、私の一番古い記憶が蘇ってきた。



小さいころから、【お兄ちゃんぶりたい陸と、陸と対等でいたい私】の構図は変わってなくて。




陸は晴れている日は、男の子とサッカーばかりしていた。



私はいつもおいてけぼりで。だから、陸が私だけを構ってくれる、雨の日が好きだったんだ。

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