第42話

「ん、紗葉のにおーい」


「セクハラ」


「妹にセクハラは適用されないだろ」




また、妹、って言う。それがどれだけ、自分の“妹”を傷つけてるか知らないくせにね。




「どうせ、童顔ですよ?りっくんは、美人な人が好きなんでしょ!」




そう、宮原さん、みたいな。




「なにピリピリしてんだよ、…あ、やべ、なんか呼ばれてるっぽい、行くわ」


「…陸、これ、食べるでしょ。お疲れさま」


「さんきゅ、俺傘持ってないから、一緒に帰ろ。ここで、待ってて」




陸は、昔から試合の後には、いつも同じグミを食べていて。用意していたそれを渡すと、少年みたいに可愛く笑って、走っていく。



私を妹に見立てて大人ぶってるくせに、時々誰よりも少年みたいに幼くなる。そんなところも、すき。悔しいけど。




「私たち、帰るけど、紗葉ちゃんはどうするの?」




お手洗いに行っていたらしいふたりは、戻ってきて、帰る準備をしている。

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