第38話

――…さっき感じた、あの予感は本物だった。



意識がどこか遠く、宇宙の彼方に行ってしまったみたいに、ついに鳴り響いた試合開始のホイッスルも、いつもなら輝いて見える陸が走り回ってる姿も、目の前でゴールを決めたらしい陸のピースサインも、なにもかもがモノクロで。



興奮したり喜んだりしているように他の人からは見えたかもしれないけれど、心は殻に閉じ込められてしまったかのようだった。




それくらい、ライバル、恋敵、と呼べる人の存在は衝撃的だったのだ、私にとっては。




もちろん昔から陸はかっこよかったし、モテていた。



でも小学生のころは、年相応の小さな正義感を持て余していた陸は、私のお兄ちゃん役として学校への行きも帰りも許される限りの時間を私の相手をしてくれていたし。



中学になれば、多少他人の目は気になり始めたものの、小学校が一緒の人も多かったからかなんとなくみんなに受け入れられてしまって。




まあそれだけ一緒にいてもカップルだという噂が出なかったのは、私があまりに精神的にも外見的にも、幼かったからだろうけど。




でもそれでも、陸が他のどんな女の人よりも私のことを優先してくれているのは、分かっていたから。

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