第35話

グラウンドの中では、練習が終わって、そろそろ試合が始まりそう。



陸を見ると、気合の入った表情で青のサッカーソックスを膝まで上げている。センサーがついてるみたいに、陸をすぐに見つけられるのが私の特技。




「あーー、ほんと西内先輩カッコイイ」


「ね、他の高校にも西内先輩のことカッコイイって言ってる人いっぱいいるんだって」




みなみちゃんと、リカちゃんの会話。


…待って、陸の名字って“西内”だよね?



驚いて、目を見開きながらふたりを見ると、陸を見つめていたらしいふたりの表情が、みるみると歓喜と驚愕と、そして興奮が混ざり合った表情に変わってく。




つられるように、ふたりの視線の方向に目を向けると、陸がこちらに向かってきていて。



「紗葉、」



私の名前を、どこまでも優しく、囁くように呼んだ。



「タオル、ありがとな」



陸の目的は、私が持ってるタオルだったようで。


やっぱりこれは、試合用のタオルだったんだ。




「ううん、試合、頑張ってね」


「おー、勝ったらアイスおごりな」


「そういうことは勝ってからいいなよ」

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