第10話

小さな声でもう一度謝るけれど、返事は返ってこない。



いくら私の背が小さくて、いくらこの人の身長が高かったとしても、さすがに聞こえてるよね…!? 無視?無視ですか?




「…感じ悪っ」




心の声が、思いがけず空気を震わせて。



はっと、右隣の彼を見上げると、刺し殺すような氷のように冷たい視線を向けられて、もう冬は通り過ぎたはずなのに、寒気が全身を駆け抜けた。





「(同じクラスなのに、どうしよう)」




結局右隣の男の人とは気まずいままに入学式が終わってしまい、私とは対照的にニコニコとしているお母さんのもとへ向かう。




「お母さん、お待たせ」


「スーツ決まらなくて遅刻しそうだったわ~」


「気合い入れすぎでしょ」


「だって娘の晴れ舞台だもの。ちゃんとムービーも録ったわよ。さあ、写真撮りましょう」




小柄で、ついでに童顔のお母さんの、どこにこんな力があるんだろうっていうくらいの力で、ぐいぐいと校門のところまで連れていかれる。

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