第9話

絶対に赤く染まっている私の頬。


ずんずんと前に進む陸は、どんな顔してくれているんだろう。



知りたいのに、勇気がでなくて。


知る勇気があったら、きっと何かが変わってたんだろうな。





緊張の色に染められた静寂の中、粛々と進められていく入学式。そわそわとした空気の中で、クラス・出席番号順に次々と名前が呼ばれていく。




「…、村岡 紗葉」




私の左隣の人が起立して、そしてついに私の名前が呼ばれて。



「はい…!」



これからの高校生活に胸躍らせ、気合いを入れて、思いっきり立ち上がると。




「いってぇ!」


「え!?え、ごごごめんなさい」




右隣の男の人の足を、ううん、足の〈小指〉を、思いっきり踏んでしまった、気が、する。




「モリヤマ シュン、――モリヤマくん?いらっしゃいませんか?」




彼が痛みで悶絶している間も、もちろん点呼は続いているわけで。



いないかと聞かれたモリヤマくんは、私を睨んで、ゆっくりと返事し、立ち上がった。




「ごめんなさい」


「……」

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