第80話
黙っているのが得策だ、と気づいた私は大人しくコウくんに運搬される。
「ったく、リクライニングで寝るのはいいけどブランケットくらい掛けろ」
「寝ようって思ってなかったの。すぅ、って急に睡魔が襲ってきた」
「リクライニング倒してたくせによくそんなこと言えるな」
軽口を叩きながら、大きなソファーに半ば落とされるように下ろされる。
落ちる感覚に逆らわず、そのまま上質なソファーに柔らかく着地するとコウくんが不思議そうに私を見た。
「なに?」
「落とされるとき何かしら反応するだろ。なに普通に落ちてんだよ。俺も普通にそのまま落としちゃったじゃん」
私をソファに落とした言い訳をしつつ、私に痛くないか?と聞いてくる王子様に笑いが込み上げてきた。
「こんな心配性な人が、私に酷いことするはずないもん。コウくんだから、大丈夫」
ふかふかのソファー、そして大きめのクッションがあったから痛いはずがない。それに、コウくんがそんな風に私に痛みを与えるはずもない。
「心配性って誰のことだよ。ん?言ってみ?」
びろーん、と私の頬を思い切り伸ばすコウくんは恥ずかしさを誤魔化すかのように意地悪な仮面を被る。
「このひと。っ、ぅあ、いひゃい…!」
コウくんを指差すと頬を抓る指の力がますます強くなる。前言撤回。この人も故意に私に危害を与える人だ。
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