第76話

「火災報知器鳴る」


「あ、そっか」


「いや鳴らなくても紫花ちゃんの前じゃ吸えねーけどさ。トラウマで」


「トラウマ?」




赤い光がちかちかとしている天井の火災報知器に目を向けつつ、耳に馴染みのないその言葉をもういちど聞き返す。




「紫花ちゃんが光綺んとこ来た時、もう俺は成人だったわけですよ」


「まあそうですよね。12歳差ですもんね。22歳でしたね」


「まあその前から結構光綺んちに遊びに行ってたんですよ俺は。ああ、あの日は本当吃驚したな。光綺が家に女の子入れてる!って思って」




私がコウくんに引き取られた8年前を思い出しているらしく、遠い目をして言葉を紡ぐのをやめてしまった将司くんをもういちど促す。




「あ、でももっと吃驚したのは紫花ちゃんの年齢。高校生かなって思ってたら小学生だったのは衝撃だった」




今となっては普通くらいの身長だけれど、小学生にしては高い160cmの身長と長い黒髪は確かに小学生に似つかわしくなかったかもしれない。




「どこまで伸びるかと思ったらそんなに伸びなかったね。何センチ?」


「162cmです」




成長期のピークは小学生だったらしい私は、小学校卒業までに160cm近くまで成長して、それから殆ど伸びていない。




「まあいいや話戻すね。昔第二邸に遊びに行ってさ、俺煙草吸おうと思ったわけよ。そしたらばちーん!って手から箱とライターを光綺に叩き落とされた。痛いってもんじゃなかったよ」

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