第75話

「で、"おじさん"がわざわざ中等部から来て女子高生を連れ出した理由は?」




私は"おじさん"を強調したふざけた口調で、将司くんの口許にマイクのように手を向ける。



勿論おじさんなんて思ってない。見た目の若々しさっていう訳じゃなくて、大人の魅力がその言葉を否定する。




「これだよ」




用意してあったのか、目の前に広げられた新聞。



額にキスをされている私とキスをしている律の顔が一面に現れ、咄嗟に目を逸らしてしまう。




「付き合って、はないよね」


「当たり前です」


「だ、よな。うん。そりゃそうだ」




ホッとしたように息を吐き出しつつも、妙に納得したような声を出す将司くん。




「どうせ律と私は家柄で釣り合いませんよーだ」


「あ、いやそういう意味じゃなくて。…これ光綺知ってんの?」


「普通に、知らないですよ?」


「知られたら大変だな」


「どうして?」




さーね、と誤魔化すように言った将司くんは、ポケットから何かを取り出そうとして、直ぐに戻した。




「煙草、私は大丈夫ですよ」




戻されたのが煙草の箱だったのをしっかりと見た私は、遠慮しないで、というニュアンスを込めて将司くんに言う。

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