王子様を変えたのは私?

第67話




「よし、吐け」


「ちょ、っと…!」




ここは、爽やかなはずの朝の教室。



文化祭の準備の痕跡がところどころに見受けられて、それが余計に爽やかさを増幅させている。




――――…はずなのに。




先程登校してきた私は、教室の扉を開けて中に入った途端に腕を強く引かれ壁に縫い付けられたのだ。




「説明しろよ、ほら」


「…、っ、やだっ」




律の唇で頬を撫ぜられると、心の底から悪寒が走り、腹の底から拒絶の言葉が出た。



クラスメイトたちは何事かと様子を伺うくせに、申し合わせた様に何も言ってこない。



いつもはからかいつつ、盛る律を抑えてくれる男子学生もいるのに。その人たちもただにやにやしているだけで。




「(なんなの、今日は)」


「何余所見してんの?唇にしてやろうか?キス」


「え?やだやだやだ!ていうか離して!」




ずん、と近づいて来た律の綺麗な顔に恐怖を覚え、私は唇の紅い部分を隠すように口を窄めた。




「で、何であの人と知り合いなんだよ」


「いやちょっと昔からの知り合いみたいな感じです」


「お前何者?桐谷と繋がってんの?」


「だから、そんな大層な家柄じゃないんだって!」

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