第64話

ホテルのロビーで、ジャンルは違えど最高の容姿を持つふたりの間にいる私。



どれだけちんちくりんに見えてしまっているのか、考えるだけで恐ろしい。




きちんとメイクをして、ヒールで身長を高く見せていて良かった…、とひとりで安堵していると、居心地の悪い沈黙が走った。




「………?」




視線を上げると、ふたりの視線が高いところで不穏にぶつかりあっている。




「言いたいことがあるなら、どうぞ?」


「え、どうしてそんなに喧嘩腰なの?」




その不安定で微妙な空気を切り裂いたのはコウくん。

ただ、先程までの余所行きの笑みと丁寧な口調は崩れている。




「じゃあ遠慮なく。……アンタと紫花の関係は?」


「さあ?言いたいことあるなら聞くけど答えるとは言ってない」


「取り敢えず紫花のこと離して。見てて苛つくんだよね」


「それって宣戦布告?」


「もちろん」


「粋がってんな、ガキ」




優雅な時が流れるハイレベルなホテルの豪華なロビーに相応しくないピリピリとした雰囲気。やっぱりコウくんは私を離してくれない。




「よし紫花帰るぞ」




ふたりだけの世界を勝手に終わらせたらしいコウくんは、あっけらかんと私に告げる。

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