第63話
「プライベート…ですか」
"お前何者だよ"
律の顔にはそう書いてある。
桐谷の御曹司とプライベートでディナーに来て、そしてエスコートされている立場の私。
律には異質な光景だろう。
ただ、植盛の御曹司でホテルの関係者という自分の立場を思い出したらしい律はまた表情を引き締めて。
「ディナーはお口に合いましたか?」
「ええ。また来ます。紫花が他にも食べたいデザートがあったようなので」
意地悪な笑みで私を馬鹿にしたコウくんの腕を抓ると、何故かコウくんの腕が伸びて私の腰を引き寄せた。
そんな私たちを見てまた表情を崩して、そしてもういちど繕った律は、話題の変換を図る。
「朱朔(すざく)さんとはパーティーでお会いさせて頂いてます。よくここのバーにもいらして下さって」
朱朔さんとは、コウくんのお兄さん。
桐谷の総合商社に就職したコウくんとは違い、どちらかというと創業家としての仕事をしている。パーティーもその一環。
「ああ、そうですか。兄はあまりアルコールに強くないので迷惑をかけていないか心配ですけど」
クスクスと余所行きの笑みを顔に貼り付けるコウくんは、それでもまだ引き寄せた私の腰を離さない。
離れようとしても離れられない。
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