第56話
女の人の視線に沿って、コウくんの視線も私へと向く。
どういう反応をしていいか分からなくて、曖昧な笑みを浮かべた。
すると、コウくんが手を離したらしい真っ白のもふもふが私に向かって一目散に突進してきて。
ピンヒールと比べて子供っぽいローヒールを履く脚を踏ん張って、その衝撃を一生懸命受け止めた。
そのまま、シェリに連れられるようにしてコウくんたちのほうへ向かっていく。
「桐谷さん、その人誰?なんでその犬がそんなに懐いてるの?私にはその犬、かなり吠えてきたのに」
女の人は敵意を剥き出しの表情でシェリに甘えられる私を睨む。ピンヒールに支えられた高い身長からの鋭い視線は、正直怖い。
「それが答え。コイツはこの屋敷に出入りを許されてるってこと」
私を背中で守るように前に出たコウくん。細身のスーツに身を包んだ後ろ姿はどうしようもなく恰好いい。
「そんなの嘘!だって、誰も貴方の家には呼んでもらえないって!だから私だって貴方の車が入って来て門が開いたタイミングで中に入ったのに…っ」
その言葉に愕然とする。さっきコウくんが言ってたように、それじゃ本当に不法侵入のストーカーだ。
「あ、親戚?親戚よね?」
「桐谷に令嬢はいない。パーティーに顔を出したりしているんだから、それくらい知っているだろ。招くような客人なら本邸に呼ぶ」
その言葉に、予想はしていたけれどこの女性が華やかな世界の人だということが分かった。
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