第55話
急いで中に入ると、ガレージに向かう前らしい、コウくんのプライベート用ではなく吉野さんが運転してくれる車が停車していて。
その車の前で女の人が吉野さんの後ろに隠れていて、コウくんはしゃがんで、興奮したシェリを宥めている。
「なんなんですか…!その犬!」
「うちの家族だけど。忠誠心が強い犬種だから、知らない奴には容赦ない。それよりそっちこそなんなの?立派な不法侵入じゃない?」
聞いたこともないような冷たい声色のコウくんは、見たこともないような冷たい視線を女の人に向けていた。
ふんわりとしたレースのワンピースを着た女の人。明るいブラウンの髪もゆるく巻かれていて、やけに高いピンヒールが大人の雰囲気を醸し出す。
「だって桐谷さんが会ってくれないから!」
「俺はそういう面倒なのは嫌だって言っただろ。それでもいいと言ったのはそっち」
「でも、好きになっちゃったの!」
「だからストーカー?冗談キツイよ、そういうの要らないから帰って。警察呼ぶよ」
吉野さんを押し退け、突然に女の人から叫ばれた愛を怖いくらいに淡々と受け流すコウくん。
一切の情を持たないその声に、女の人はコウくんから目を逸らして。
「あ」
私の存在に、気付いた。
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