第53話

自由気ままなシェリは、散歩に行きたくなるタイミングも自由奔放で。



私が高校でコウくんが会社に行っているときは、犠牲になるのは樹理ちゃんということになる。




「大変だよね、シェリの相手。ごめんね、ありがとういつも」


「いいのよ、動物は大好きだし。まあもう少し落ち着いてくれたら嬉しいなー、とは思うけどね」




クスクスと笑う樹理ちゃんに、私も笑みが零れた。


足の辺りにクンクン、と甘えたように鼻を擦り付けるシェリ。




「駄目よ、シェリ。お留守番してて。もうすぐコウくんも帰ってくるから」




樹理ちゃんにもコウくんが帰って来る頃に帰って来ると言付けて、大きな門を開けてもらい外に出る。




途端にコンクリートからの照り付けが私を襲って、まだまだ残る夏の名残に何故だか胸が軽くなった。




どこに行こうかな。



本屋さんに行こうか。

新しい楽譜を買いに行こうか。

それとも洋服でも見に行こうかな。




大通りに沿って歩いていくと高級住宅街の近くということもあり、様々な店舗が立ち並ぶ。




大通りに目を向けて、人の多さにげんなりとした私は交差点を曲がりメインストリートから抜け出す。




結局目指したのは大きめのペットショップ。




「(どれにしようかな?)」




散歩に連れ出してあげられなかったシェリにプレゼントする首輪を探していた。

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