王子様は独占欲が強め

第51話




――――…どうしても、欲しいものがある。




何不自由なく、桐谷の家で育ててもらっているけれど、どうしても手に入らないもの。




"あの日"から、私の欲しい物はいちども変わらずひとつだけ。




花姫になることが、きっとそれを手に入れることのできる最大で最後のチャンスだから。




もし、花姫になれたならば。


思い切ってお願いできるはず。



桐谷にとっても花姫の乙女は利用価値があるはずだから。




自分を駒にしてでも、"家族"という括りに拘る私はもしかして少し可笑しいのかもしれない。




花姫というプレッシャー。

迫り来る瑛茗祭。




コウくんの言う通り、もう私にどうにかすることは出来ない。花姫は3年間の学園生活の中での周りからの評価だから。




でも、何かしなくては自分が何かに押し潰されてしまいそうで。




演奏会があるわけではない、人前で発表する機会があるわけでもない。




狂ったようにピアノを弾いた。




ピアノの鍵盤の上に伏せると、耳障りな不協和音が鼓膜を揺らして。




…散歩でも行ってこようかな。

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