第49話

律のほうへ不満げな意思を込めた視線を投げかけてみるけれど、律は素知らぬふりをして堂々と歩いている。



すると、ポケットに入れていた携帯が震えた。確認してみるとコウくんからメッセージが届いていて。




【出張明けだから、もう上がらせて貰った。学校まで迎えに行くよ】




お願いします、と返信しようと思ったけれど、隣から視線を感じる。




「なに、男?」




律の存在を一瞬本気で忘れてしまっていた。疑わしい、というように眉間に皺を寄せて私を睨みつけるように見ている。




「関係ないでしょ」


「ふざけんな。今日は俺んちの車乗って帰れよ」


「家に帰れるか甚だ疑問なので結構です」


「わかってんじゃん、ホテル行こうか?」




品のない律の誘いをいつものように断りながらも、隣でスマートフォンの画面をスワイプさせつつ返事をする。




【ありがと。友達といるから近くの公園がいいな】




育ちのいい律は絶対にここで画面を覗き込んだり、携帯を奪い取ったりはしない。



――――…だいぶ苛ついてはいるようだけれど。



妙な信頼を私は律に持っていて、だからこそ隣でこんなに堂々と核心的な返信をすることが出来る。




校門とは思えない、まるで西洋の城のもののような立派な門まで歩くと、植盛の車は来ていたようで。

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