第48話

「結婚を申し込むって…。ありえないです」




いつでも軽い口調で、真剣さを感じない律の言葉たちを思い出して、思いっきり首を横に振る。




「お前に言ってること俺はいつでも本気だよ。そんなこと軽率に言える立場じゃねえし」


「そこはまず交際を申し込むんじゃない?」


「紫花、俺と付き合って」


「ゴメンナサイ」




即答すると、ほらな、というような視線を交わし合う律と地居くん。愉しげなふたりの雰囲気に居づらさを感じたのは私で。




「インタビューってもう終わりでいいんですか?」




律の甘い視線と地居くんの探るような視線から逃れるために、早くカフェテリアから出たくて。



失礼だとは思いつつ、私から暗にインタビューの終わりを示唆した。




「ええ、お付き合いありがとうございました。外はまだまだ暑いようなのでウチの車でお送りしましょうか?」


「いえ、結構です。カフェモカご馳走さまでした」




小さく会釈をし、鞄を持ってカフェテリアから出るとドアベルが涼しく鳴った。



外の茹だるような暑さに、恨めしい気持ちをこめて太陽を見上げると思っていたよりも橙色になっていて。



情趣的な全ての光に、少し切ない気持ちになった。




私が聴いたドアベルの音と同じ響きが後ろから聴こえて、律が私の隣に追いつき、並んで歩く。

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