第47話

「インタビュー、お願いします」




きっと私の表情に哀しみの色が溢れてしまったのだろう。


心配そうに私を見つめる律の視線から逃れるように、私は地居くんに話し掛ける。




先程の律の甘美な色気からフリーズしていたふたりも、我に返ったように姿勢を整え表情を引き締めた。




「ええ、はい…、それでは永藤さん、宜しくお願いします」




趣味・特技など、当たり障りの無い質問に私は淡々と答えていく。




律は自主参加だったはずなのに、余りにも刺激のない時間だったのか椅子に座り、脚を組み肘立てに両腕を乗せてうとうとしている。




「そういえば、永藤さんのご家庭は?」


「私は、こちらの華やかな世界とは縁がありませんから」




この学園では何度も聞かれるこの質問にいつものように答えると、寝ていれば完璧に恰好良い男の声が横から聞こえた。




「それ嘘。紫花は嘘つきだから」


「律は黙って寝てて。根拠もない癖に。私は正真正銘"あっち側"の人間なの」


「まあ俺と結婚すれば否応無くこっち側だけどな」


「っ、ば!かじゃないの!」




ばん!とテーブルを叩くと、カップの中の小さなカフェモカの海に波が寄せる。



落ちてきた太陽がカップを照らして、影を作った。




「今の発言は、植盛くんは永藤さんに既に結婚を申し込んでいらっしゃるという認識でよろしいですね?」

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