第46話

「初めてパーティーで会った時、驚いたんだ。恰好良いとかそんな言葉じゃ足りなくて。…変かもしれないけど、そのとき初めて人に対して"美しい"って思った」


「うん」


「でも家の格では負けないと思ってた。どうせ顔だけだろ、って。でも桐谷だって知って初めて敵わないって思った」




あの人には勝てねーよ、と少し自嘲気味に話す律が珍しくて、無意識にジッと見つめてしまっていたらしい。




「馬鹿、そんなに見んな。…惚れた?」


「馬鹿は律のほうでしょ。そのポジティブすぎる思考回路どうにかしなよ」


「だってお前の周りでいちばんイイ男って俺だろ?」


「残念。律よりもイイ男知ってるから」




自信を持って、そう言える。もちろん脳裏に浮かぶのはコウくん。


容姿家柄だけじゃない。コウくんは優しくて、大人で、王子様みたいで。




自然と視線が手首に向いた。銀細工のブレスレットは今日も変わらず控えめに輝いている。しゃらん、ハートのモチーフが揺れた。




「それくれた奴そんなにイイ男な訳?そいつだろ?お前が思う俺よりイイ男って」


「うん」


「付き合ってんの?」


「付き合ってないよ、家族みたいなものだし」




家族にしてもらえないし、なんて言えない。



共に住んでいることが家族の定義ならば、私たちは家族だろう。



それでも、同じ名字であることが家族の定義なら。私とコウくんは家族ではない。

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