第43話

幼い頃から知り合いだったふたり。その中で麻耶はひとつのことを学んだらしい。



嶺岸さんに言い返したら、負け。



麻耶はそれだけを自分に言い聞かせて、決して気が長いとは言えない自分の感情をコントロールしている。




「何なのよ、アイツ。そもそもあの子の家も私の家と同じで成金でしょ?家柄も何もないっつーの」




はあ、と苛々を飛ばすかのように豪快な息を吐いて、パスタボウルに叩きつけるように落としたフォークを再び握って麻耶はパスタを食べ始める。




「苛つくけど、多分あの子が花姫のいちばんのライバルよ」


「うん、わかってる。中等部のときから凄かったもんね嶺岸さんは」




花姫になりたい、その気持ちを隠すことなく彼女は学園生活を過ごしていた。全ての言動を、ただ花姫のためだけに。





「アイツ、植盛のこと狙ってるらしいから。そういうところでもあなたに対抗意識持ってるのかもね。気をつけなよ」


「律?なんで?」


「さっき話したこと聞いてた?植盛は確実に今この学園においていちばん価値のある男よ。アイツが狙わないわけないでしょ?」





良くも悪くも、嶺岸さんは向上心が強い。律はそういう面倒が嫌できっと"こっち側"の女の子とは遊んだりしないんだろう。



利用されるのなんて、きっと彼のプライドが許さないから。



だからこそ、庶民の私のことは構う訳で。




利用するとか、されるとか。


友人を作るのにもそんなことを考えなくてはいけない"こっち側"に辟易した。

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