第42話

――――…どれもこれも、花姫になるために。




「永藤さんがテラスにいるのが見えたから。少し時間をちょうだい?」




そう言って彼女は、こちらの返事も聞かずに椅子に座り私の方に身体を向けた。その後ろでは麻耶が鬼のような形相で嶺岸さんを睨んでいる。




「あなた、次の新聞部の花姫特集号に載るらしいわね」


「私はまだ認めてないけれど」


「私、写真だけじゃなくてもう取材まで終わってるの。私の方が優先順位が上ってことよね」


「…はあ、」


「花姫になるには、容姿と所作の優美さが必要だけれど。でも、絶対条件として家柄もあると思わない?」




それだけ、と言いたいことを言ったらしい彼女は満足そうに髪を靡かせて去って行った。




ぽかーん、効果音をつけるなら、それがいちばん相応しいであろう表情を浮かべていると思う。



何度か、瞬きを繰り返してしまった。




――――…と、




ガシャン!掴んでいたフォークをパスタボウルに叩き落としたらしい親友の目は幾筋にも血走っている。




「あんの、嶺岸!!!本当にムカつくわね!」


「よく耐えたよ、麻耶」




麻耶と嶺岸さんは明らかに相性が悪い。派手な、否、華やかな見た目も、気の強い性格も。まあ所謂、キャラ被りなのだ。

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