第36話
「やはりおふたりはお付き合いなさっているのですか?」
ブラウンのバインダーを持つレポーターが、周りのざわめきを煽るように律に質問をする。
故意的に出された大きな声に、周りのざわめきが収まって。
私か律の言葉を待っている、この雰囲気は耐え難い。
「付き合ってな…っ、」
私が否定の言葉を述べようとした瞬間、律は私の耳に口付けて。
嫌な感覚が背中を駆け抜け、私の言葉はぷつりと切れる。
「外堀から埋めてやろうか?」
耳許で、律は私に言葉を囁く。もういちどざわめき始めた周囲を満足そうに見て、そしてニコリ、明るい髪色に合うような笑みを浮かべた。
「俺たちのこと、どう思う?」
私の肩を抱き、そう零した律の言葉に周囲から黄色い悲鳴が聞こえる。離れようとしてもかなり強く掴まれている身体はびくともしない。
その力の差で、いつも律は手加減してくれていることに気がついた。
「勿論お似合いですよ。この学校には永藤さんに似合う男子学生も、植盛くんに似合う女子学生もお互い以外いませんからね」
レポート担当の学生がそう言うと、カメラ担当の学生も嬉しそうに声を上げた。
「写真、オッケーです!」
その場でデジタル一眼レフからタブレット端末へデータを移したらしい彼は、得意気に私たちにタブレットを向ける。
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